被害者は?

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「やっほー、ネコちゃん。」
「葵ちゃん!?どうしたの?なにか事件でも??」
「やあだ、違うわよぅ。“あれ”から雪女郎様も心配しててね。
 大丈夫だとは思うけど、様子見にv」
「あ・・ごめんね。こんなに迷惑かけちゃうなんて思わなかったから・・・」
「んもう、気にしないでっていってるでしょう?
 未完成な上に、アレンジまでした『モノ』だったから、私達が気にしすぎてるだけなの!」
「うん。でも、あれからちゃんとお礼にも行ってないから・・・
 バイトが休みの日に行こうとするんだけど・ね。」
「どうしたの?」
「何故か、鬼太郎が機嫌悪くするの。」
「へ~え。鬼太郎がねぇ・・・」
「それだけじゃなくってね。普段、バイトに行くのも何故か嫌がるようになってて・・・
 蒼兄さんや、黒鴉さんが来ても、あたしが会いに行くと不機嫌なの。
 今までそんな事無かったのに・・あたし、何か怒らせるような事、したのかなぁ・・・」
心底、落ち込んだように呟くネコ娘を他所に、葵は身体を震わせて笑いを耐えるのに必死だ。
「ネコ娘。こんな所にいたのかい?」
「鬼太郎・・・」
噂をすればなんとやら。御本人の登場に、ちょっとした悪戯を思いつく。
「ご無沙汰、鬼太郎。」
「やあ、雪女。今日はどうしたんだい?」
「ネコちゃんとショッピングにでも行こうと思って、誘いに来たのよ。」
「え?ちょ・葵ちゃん!?」
後ろからネコ娘を抱き締めて、その耳元で囁く。
「(しーっ。ちょっと話合わせて。)ね?そうよね、ネコちゃん。」
「う、うん。人間界は私の方がよく知ってるから。」
葵の息が耳元にかかって、知らず身体がピクリと反応して、頬が赤く染まる。
「あれ?ネコちゃん、ちょっと胸、おっきくなってない?」
「うひゃぁ!っあ、葵ちゃん、やだ、さわんないでぇ・・」
触れられて、ますます赤くなるネコ娘を確認して、ちらっと鬼太郎をみやれば。
今までの鬼太郎なら、『何やってるんだか』なんて呆れたような視線を送っていただろうに、
刺すような視線でこっちを・・というか、自分を見ている。
「やっぱりネコちゃん、かぁわいいv ねぇ、今からでも私のモノにならない?
 大事に大事に可愛がったげるから・・・」
クスクス笑いながら、さっき耳元が弱い事を知って、ワザと息を吹きかけながら囁く。
「にゃっ・・そ、そんな・・ことぉ・・・」
「そこら辺の男より、愛情込めて大事にするわよぉ?皆で、ね。」
挑発するように、鬼太郎を見やりながら、“皆で”と強調した瞬間。
ネコ娘の身体が自分の腕の中から消えていた。
「出来ない事は言わない方が良いと思うよ。」
「あら。取られちゃった、残念。」
「ふぇ?・・き・鬼太郎??」
何がどうなっているのかわからないままのネコ娘は、半ば呆然として鬼太郎の腕の中に居る。

「『僕のネコ娘』を取り返しただけだろう?人聞きが悪い言い方するなよ。」
「いやぁねぇ。『所有権』振りかざす程の権利なんて、誰にも無いじゃないの。
 ネコちゃんはネコちゃん自身のモノだもの。」
「ネコ娘の『全て』はもう『僕のモノ』だからね。当然の権利を主張してるだけさ。」
「・・・うにゃぁッ!! あ・あたし、『鬼太郎の』になんて、いつなったのぉぉぉッッッ!!?」
「「・・・・・・・・・・・」」
鬼太郎との応酬を楽しんでいた所に、この『天然』な台詞。
「ネコ娘・・・君と僕の関係は、何かな?」
「にゃっ? 鬼太郎と、あたしの関係??・・・ん~~~と、あれ?・・え~~~と・・・・・」
引き攣る顔をなんとか笑顔に変えながら、抱き締めたままのネコ娘に質問する鬼太郎。
そんな鬼太郎に気付かず、その腕の中で顎に指を当てて、考え込むネコ娘。
「小さい頃からの幼なじみでぇ、鬼太郎の仲間でぇ・・・あ、そうそう!!」
「わかったの?」
「うん!『鬼太郎のお姉さん役』!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ネコちゃん、『お姉さん役』って、何?」
「だって。鬼太郎ってば、放っといたらいつまでだって寝こけるし、洗濯とか掃除とか、てんで無頓着なんだもの。
 炊事はあたしも苦手だから、偉そうな事言えないけど、片付けだっていい加減で。
 だから親父さんが、『ネコ娘のようなしっかりした姉がおったらのぉ』って呟いてたから、
 『じゃあ、あたし鬼太郎の“お姉さん”になる』って、ホントに小さい頃そう言ったの。
 けど、血は繋がってないから」
「『お姉さん役』なのね?」
「そうなの! ね?鬼太郎v」
スッキリしたと言わんばかりに顔を綻ばせ、鬼太郎に同意を求めるネコ娘。
対照的に鬼太郎は、その背後に目に映りそうな程の、陰鬱な気配を帯びたまま佇んでいて。
「ふ~~ん。そう。・・・鈍感なのは君の方だよねぇ。それとも、僕に対する『意趣返し』かい??」
「???・・・鬼太郎?なに言ってるの??」
「ああ、雪女。悪いけど、今日の君たちの予定は『無期延期』になったから。」
否を言えば例え四十七士だろうが、容赦ない攻撃を食らわすという凄みを利かせた声色で。
「わかったわ。でも、“程々に”・・ね。嫌われるわよ~~??」
「そんな事、思う暇なんて無いうちに、覚え込んでもらうさ。」
暗い微笑みを口元に浮かべて、ネコ娘を軽々と抱き上げると、さっさと踵を返して森の中へ向かう鬼太郎。
「え!?ちょっと、鬼太郎?何処へ・・せっかく葵ちゃん来てるのに!
 それに、ゲゲゲハウスはそっちじゃなくて反対でしょう?」
「僕の家じゃなくて君の家へ行くんだよ。誰もいない方がいいだろう?
 まあ、いつかは誰かが居ても、それはそれで楽しめるだろうけど。
 今はまだ・・・ね。」
「なんのことだか解んないよぅ・・・ねぇ、なんでそんな不機嫌なの??」
「だから、その理由をこれから教えてあげるよ。“じっくりと”・・ね。」
そんな会話を交わしながら遠ざかる二人を見送って、
『鬼太郎』をからかいに来たのに、『それ以前の』問題があったかと、
拍子抜けしたものの、『めったに見られない鬼太郎』を見れたからまあいいかと納得して。
(頑張ってね、ネコちゃん。)
心の中でこれからのネコ娘に同情して妖怪横町を後にした。

 


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                                      Fin

 

サイト開設記念に、馨迦さんが下さいました!(≧▽≦)

実はコレ、前にいただいた「慕情」と「存在」のおまけだそうです^^

もしまだお読みでない方は↑にリンク貼っておきますのでぜひ!!

そして、邪魔な挿絵は私がつけさせていただきました^^

馨迦さんのみ、どうぞお持ち帰りくださいませ^^

更にはこの後のお話を私が書かせていただくことになりました!!

もちろん裏ですよ(笑)

最初から最後まで強気な鬼太郎さん、というご要望もいただいておりますので頑張ります!

まだそういうお話は書いたことがないので、今からワクワクしてます(≧▽≦)

完成までどうかお待ちくださいませm(_ _)m

馨迦さん、ステキな開設記念ありがとうございました!!

 

 

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