君と僕と砂浜と

人間世界での夏休み。

知られた海水浴場は親子連れでいっぱいだった。

そのため、横丁メンバーは人間にあまり知られていない浜辺にやってきた。

ネコ娘、アマビエ、ろくろ首は着くなり海へと駆け出した。

中にはアマビエに無理やり引っ張られていくかわうその姿も。

水の冷たさに声を上げながらも、早速持ってきたビーチボールで遊び始める。

砂かけ婆と子泣き爺、それに目玉おやじは、

どこから持ってきたのかジェットスキーに乗って沖へと出て行った。

残されたのは鬼太郎ただ一人。

泳ぐでもなく夏の日差しの下、浜辺で一人寝そべっていた。

 

「そぉ~れ!」

「ネコちゃん!いったわよ~!」

「任せて~!それっ!あっ!」

アマビエから受けたボールをろくろ首にトスしたつもりが、浜辺へと転がってしまった。

「あちゃ~、失敗!」

そう言ってボールを追いかけるネコ娘。

ふと浜辺に寝そべる鬼太郎の姿が目に入った。

「ちょっと抜けるね~!」

ネコ娘はそう言って、ボールをろくろ首に投げて鬼太郎の元に走っていく。

「きたろ~!」

名前を呼ばれて鬼太郎はぼんやりと目を開けた。

笑顔で駆けてくるネコ娘の姿が太陽に光と重なる。

(眩しい・・・・。)

そしてそのまま鬼太郎の目の前まできたとき、

「きゃっ!!」

そう小さく叫んだと思ったら、目の前にネコ娘の顔があった。

 

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「あ・・・・。」

「あ・・・・・。」

どうやら躓いた拍子にこちらへ倒れこんできたようだった。

二人は動けず、ただただ見つめ合う。

 

海から上がってきたネコ娘の濡れた肌が艶っぽい。

そして肩に置かれた冷たい手が鬼太郎には心地よかった。

 

ネコ娘は、日差しに照らされた鬼太郎の肩の熱さを感じていた。

 

遠くに聞える楽しげな声。

絶えることなく聞こえる波の音。

いつしか二人の顔が近づいていった。

あと10cm。

と、ネコ娘の後頭部に何かがぶつかってきた。

するとその拍子に、二人の唇が軽く触れた。

「っっ!!!」

パッと振り返るとアマビエがかわうその後ろから顔を覗かせて笑っていた。

ぶつかったのはアマビエの投げたビーチボール。

「ちょっと、アマビエ!!何するのよ!」

鬼太郎とのキスが恥ずかしくて、必要以上に声が大きくなる。

「キャハハ!アタイは手伝ってあげたんだよ~!」

と、言いながらかわうその首根っこを掴んで海へと逃げていくアマビエ。

「あっ!待ちなさいよ~!!」

そう言って、立ち上がって追いかけようとするネコ娘に鬼太郎が声をかけた。

「ネコ娘。」

「にゃっ!?」

できるだけ鬼太郎の顔を見ないようにしていたネコ娘はびっくりしてしまう。

赤い顔でゆっくりと振り返ると、鬼太郎はいつもの笑顔で、

「さっきのは、事故?それとも・・・・。」

「!!じっ・・・事故よっ!!!」

そう言ってネコ娘はその場から走り去ってしまった。

 

恥ずかしすぎて思いっきり否定してしまった。

鬼太郎の反応が気になったが、それを見る勇気はネコ娘にはなかった。

 

一方残された鬼太郎は、

(ふぅん、事故ね・・・・。今回はそういうことにしておいてあげるよ。

でも、もしまた君から仕掛けてきたときは、逃がさないよ、ネコ娘・・・・。)

一人楽しそうに笑っていた・・・・。

 

 

 

 

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