「急がなきゃ!!」
目にも留まらぬスピードで横丁を駆け抜けて行ったのはネコ娘。
早朝からのバイトを終え、一度家に戻り身支度を整えたのはある約束があったから。
数日前に手に入れた映画のチケット。
ネコ娘は例のごとく鬼太郎を誘った。
いつもは甘ったるい恋愛映画に誘うため鬼太郎も乗り気ではないが、
今回はアクション映画ということもあってすんなりいい返事をくれた。
しかし当日はネコ娘がバイト上がりで行くことになったため、二人は公園で待ち合わせをしていた。
常々男女のデートをしたいと思っていたネコ娘にとっては、
待ち合わせという行為だけで心が弾んだ。
相手を待つ時間も、そこへ現れた想い人を見つけるのも嬉しいのだ。
相変わらず猛スピードで駆けていくネコ娘は、やがて待ち合わせの公園へと近づいていた。
「あの角を曲がれば公園だわ。」
角を曲がり、公園の入り口へと目を向けた。
すると、そこには鬼太郎の姿があった。
「鬼太郎!」
待ち合わせの時間よりも少し早めに到着したネコ娘は驚いた。
鬼太郎のほうが先に着いていたのだ。
最悪寝坊して約束の時間を大幅にオーバーし兼ねないとも思っていたのに。
「やぁ、お疲れ様。」
ビックリしているネコ娘に、鬼太郎は穏やかに労いの言葉をかける。
「あ、うん・・・。もしかして待たせちゃった??」
「いや、僕も今来たところだよ。」
まるで本当の恋人同士のようだと、ネコ娘は嬉しくなる。
「・・・よかった。」
そう笑顔で返せば、スッと手を繋がれた。
「えっ・・・?」
「さぁ、行こうか、ネコ娘。」
笑顔でそう言えば、鬼太郎はそのままゆっくり歩き出した。
「・・・・うんっ!」
ネコ娘は満面の笑みで鬼太郎の横に並んだ。
(たまには素直にならないとね。
君が僕から離れないように・・・。)
終