鬼太郎とネコ娘がめでたく結ばれてから数ヶ月。
その日、目玉おやじは子泣き爺との約束があり家を留守にしていた。
「ご馳走様でした。」
「お粗末様でしたっ。」
ネコ娘の手料理を残さず食べ終えた鬼太郎が手を合わせる。
それを見てネコ娘は嬉しそうに笑う。
そしてそのまま食器を片付け始める。
結婚する前にもこういうことはたまにあったが、結婚してからは毎日のことになった。
何事も楽しそうにこなすネコ娘を、鬼太郎は微笑みながら見つめる。
「僕も手伝おうか?」
そう言えば、
「ありがと、でも大丈夫よ。 鬼太郎は休んでて。」
と、その気遣いが嬉しいのか、笑顔を向ける。
(僕にはもったいないな・・・。)
ネコ娘の幸せそうな笑顔を見ていると、本当にそう思う。
ネコ娘にしてみれば、相手が鬼太郎だからこそなのだが・・・。
その後も鼻歌を口ずさみながら食器を洗うネコ娘の後姿を、
鬼太郎はたたんである布団に寄りかかったまま見つめていた。
それから少しして、食器を洗い終えたネコ娘がお茶を入れて戻ってきた。
「はい、どうぞ。」
ネコ娘はそう言ってちゃぶ台に湯のみを置く。
「ネコ娘。」
布団に寄りかかったまま、鬼太郎は優しくネコ娘を呼んだ。
「?」
不思議そうなネコ娘に、鬼太郎は、
「おいで。」
と、微笑む。
「あっ・・・・うん・・・・。」
二人が結婚してからは、目玉おやじも家を空けることが多くなった。
そしてそういう時は必ず鬼太郎から誘ってくるのだ。
ネコ娘は立ち上がり、ゆっくりと鬼太郎の元へと歩いていく。
やがて近くまでくれば鬼太郎が手を伸ばし、ネコ娘の身体を抱き寄せる。
鬼太郎の胸に顔を寄せ、頬を染めながら身体を預けてくるネコ娘に、
鬼太郎は満足そうに微笑む。
「今日は何か面白いことあったかい?」
「今日はねぇ、変なお客さんがいたわ。」
もはや幾度となく繰り返される鬼太郎との行為自体が嫌なわけではないが、
ネコ娘にとって、こうやって身を寄せ合いながらの穏やかな時間が何より好きだった。
何気ないその日あった出来事を話すだけ。
でも、何よりも心穏やかになれる時間。
それは鬼太郎にとっても同じだった。
時折髪を撫でる優しい指。
自分だけを見つめるたった一つの目。
ネコ娘は次第に夢の中へと誘われていく・・・・・。
ネコ娘・・・・
愛してるよ・・・・・
(きたろ・・・・?)
ずっと傍にいてよ・・・・・
(あたし、ずっと鬼太郎の傍にいるよ。)
ネコ娘・・・・・
「ん・・・・・きたろ・・・・。」
何かが触れた。
目を開ければ、そこには自分を見下ろす鬼太郎の顔。
「目が覚めた?」
「あ、あれ?あたし、寝ちゃったの?・・・って、にゃ~~!!??」
ふと自分の胸元がスースーするので見てみれば、鬼太郎の手が素肌に触れていた。
「あっ・・・・きっ・・・きた・・・ろ・・・・っ。」
「ここまでされて起きないのもどうかと思うよ?」
慌てるネコ娘に、鬼太郎はクスクス笑いながらそう言う。
「そ、そんなこと言われても・・・・。」
「もしもこれが僕じゃなかったらどうするつもりだい?」
さっき同様笑ってはいるが、その瞳にはうっすら闇が潜む。
「きっ、鬼太郎以外なんてあるわけないじゃない!」
「本当にそうかな?」
「ほ、本当よ!・・・にゃぅ・・・。」
胸元に触れていた手をゆっくりと動かせば、ネコ娘はすぐに反応してしまう。
「ふぅん、じゃあ証明してよ。君がどれだけ僕を求めてるかってさ・・・・。」
「にゃっ!?・・・・・わ、わかったわよぅ・・・・・。」
もう何度もその肌を重ねているのに、ネコ娘は未だ慣れないようで、
まるで初めてのように顔を赤くしてしまう。
そしてそれは、鬼太郎をゾクゾクさせる。
ネコ娘は自分の両手で鬼太郎の頬を包み、ゆっくりと引き寄せた。
そして唇を重ねた。
「んっ・・・・。」
何度重ねてもその口づけはお互いの身体に熱を持たせる。
やがてどちらからともなく唇が開き、更に深く口づけていく。
すると胸元に触れていた鬼太郎の手がブラウスの中へと滑り込み、
その柔らかな膨らみを優しく包みこむ。
「ふっ・・・んん・・・っ。」
身体はピクンと跳ね、鼻から抜ける甘い声に、鬼太郎は更なる高みへと期待を寄せる。
(僕以外の誰かになんて、絶対に触れさせないよ。
君は僕だけのものなんだから・・・・。)
ゆっくりと唇を離せば、うっとりとした瞳が見つめる。
「きたろぉ・・・・・、好き・・・・。」
「ネコ娘・・・・、愛してるよ・・・。」
薄暗い室内で、二人の息遣いだけが荒々しくなっていった・・・・。
横を見ればスゥスゥと寝息を立てるネコ娘。
さっきまでの艶っぽい表情が嘘のように、あどけない顔を見せるネコ娘に
鬼太郎はフッと小さな笑いを零す。
行為のあと、ネコ娘は大概そのまま眠ってしまう。
そんなに激しいのかと、自分に呆れることもあるが・・・。
鬼太郎は起き上がり、ネコ娘に寝巻きを着せてやる。
これもいつものこと。
そして横に布団を敷き、ネコ娘を抱きかかえる。
「・・・ん・・・・、きたろ・・・。」
「ネコ娘、布団で寝よう?」
そう優しく囁けば、ネコ娘は両腕を鬼太郎の首に回してくる。
「ん・・・・、きたろぉ・・・大好き・・・・。」
ろれつの回らないその言い方に、鬼太郎はドキッとしてしまう。
ついまた行為に及びたくなるが、翌日ネコ娘は朝からバイトだと言っていたことを思い出し、
そのままゆっくりと布団に降ろす。
そして自分もその横に寝転がり、ネコ娘の首に腕を通す。
「ネコ娘、ゆっくりおやすみ・・・・。」
そう静かに言って、その白くて柔らかい頬に口づけた。
そして鬼太郎もすぐに眠りについた。
幸せそうに眠る二人を月明かりが優しく照らす・・・・・。
終