不意打ち

君は、いつになったら本当の僕の気持ちに気づいてくれる?


今日も朝から、元気のいい声が頭から降ってきた。
「きたろ~、おやじさ~ん、朝ご飯できたわよ~!」
そう言って僕を起こしにかかる。
「ほら起きて!今日もいい天気だよ!」
「うぅん・・・眠いよ、ネコ娘ぇ・・・・。」
本当は、さっきから鼻歌を歌いながら朝ご飯を作ってる君をこっそり見てたけど、
ちょっと甘えてみたくなったんだ。
「もぉ~、早く起きなきゃお魚が冷めちゃうわよ~?」
ちょっとだけ頬を染めて、口調も優しくなる。
「わかったよ・・・・。」
僕はそう言って欠伸をしながら起き上がる。

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「おはよう、鬼太郎!」
起きたのを確認すると、すごく嬉しそうに笑う。

程なく3人での朝食が始まる。
他愛のない話をしながらの食事はとても心地いい。
時々何か新しいメニューに挑戦すると君がどう?って聞いてくるから、
僕は思った通りにおいしいよ、と言う。
それだけで君はこの上なく嬉しそうな顔をする。

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そんな君を見て僕がどんなに幸せかなんて、きっと知らないだろうね。
普段から僕の気を引こうといろんなことを考えてるみたいだけど、
僕は素っ気なく返す。
だって、もしもそこで僕が本当のことを言ってしまったら、逆に困るだろう?
それに、僕を想ってやきもきしてる君を見てるのが好きなんだ。
僕がこんなふうに思ってるって知ったら、
君は「捻くれてる」って言うだろうね。
だけどさ、僕らの時は永いとはいえ、いつかは大人になっていく。
そうなったら君はもっと綺麗になって、落ち着いた女性になる。
だから今はそうやってコロコロ変わる君の表情を見ていたいんだ。

「・・・なのよ、って、聞いてる?」
「あ、ごめん。聞いてなかった。」
「もぉ~!鬼太郎ってば隙あらばぼ~っとしてるんだから~。」
そう言って頬を膨らませて半ば呆れている。
これさえもいつもの日常。
朝食を食べ終えて後片付けを始める君に、手伝うよ、と言えば、
ありがとうと微笑む。
そんな何気ない風景を、僕はとても大切に思う。

後片付けも終わり、温かいお茶を入れちゃぶ台を囲む。
そこでも話の中心は彼女。
人間界からいろんな情報を仕入れてくるから、新し物好きの父さんは楽しそう。
僕はそんな二人を見ているのが好きなんだけど、
一向に話に入ってこない僕に彼女は不満みたいだ。
「鬼太郎ってば、またぼーっとしてたでしょ?」
「そんなことないって。」
ぼーっとはしてない。
彼女からはそう見えたんだろうけど。

「あ、そろそろ行かなきゃ!」
最近始めた
幼稚園での仕事。
子供たちが可愛いって凄く楽しそうだけど、
僕はちょっとだけ嫉妬してしまうんだ。
僕以外の誰かに、そのとびきりの笑顔を見せているということに。
子供じみてるとは思うけど、心に嘘はつけないだろう?
だから今日は少しだけ僕の本音を伝えるよ。

「もう行ってしまうのかい?」
「・・・にゃっ?」
大きな目を見開いて吃驚したと思ったら、ほんのり頬が赤く染まる。
きっと、
『それって寂しいってこと~!?』
とか言うんだろうな、なんて思ってたら、

「・・・バカ・・・。」
と、赤い顔で目だけをこっちに向けて呟くと、逃げるように出掛けて行った。

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・・・あれ?あれれ?
僕はしばらく戸口を見つめたまま呆然としていた。
・・・あんな反応するなんて思ってもみなかった。

「鬼太郎、どうしてお前が赤くなっとるんじゃ?」
「えっ!?」
父さんに言われるまで気付かなかったけど、僕の顔は真っ赤になっていたんだ。
だって、あの時のネコ娘の表情があまりにも可愛くて・・・。
ハハハ、もしかすると片思いなのは僕のほうなのかもね。
だって、さっきまで一緒にいたのに、

 

もう君に会いたいんだもの・・・。

 

 

 

「RDG」矢野様が企画された

「MPL祭り」に出品させていただきました。

 

 

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