君がいるから

朝からずっと降り続く雨を、ネコ娘はちゃぶ台に頬杖をついて眺めていた。
「・・・よく降るね~。」
「・・・梅雨だからね・・・。」
ネコ娘の呟きに、ちゃぶ台の向こうで大の字になっている鬼太郎が気だるそうに答える。
目玉おやじはいつも通り、茶碗に注がれた
紅茶風呂で居眠りしている。
今日はまだ妖怪ポストに手紙もなく、至って平和な日常の光景。
湿気のせいで床がぺたぺたするものの、ただまどろんでいるこの状況は3人にとってこの上なく心地よい。
小さな窓から見える雨を眺めていたネコ娘の目も、今は半分しか開いていない。
やがてゆっくりとした動作でちゃぶ台に突っ伏した。
「雨の日って、どうして眠くなるんだろ・・・。」
すでに瞼は辛うじて開いている状態で、ネコ娘が呟く。
「ん~・・・、僕はいつでも眠いけど・・・。」
独り言にも聞こえるが、鬼太郎は律義に答えてやる。
「もう、鬼太郎ったら・・・。」
鬼太郎は寝過ぎよ。
そう言いたかったが、眠さで舌がうまく動いてくれない。
ネコ娘はそのまま寝息をたて始めた。
小さくも規則正しい寝息が、鬼太郎を眠りへと誘う。
眠りにつく寸前、雨の匂いに混じってネコ娘の甘く柔らかな香りが鬼太郎の鼻を擽った。
(ネコ娘の匂いって、どうしてこんなに安心するんだろう・・・。ずっとずっと、このまま側に・・・・。)
心がほどけていくようなとても心地よい気分で、鬼太郎は眠りに落ちていった。

それはなんてことない、梅雨のある日の事。

 

 

 

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