夕暮れ時、鬼太郎とネコ娘は人間界へと買い物に来ていた。
通りを歩いていると、前方から一人の男性が声を掛けてきた。
「猫さん!」
「あっ、山田さん!バイト帰りですか?」
山田と呼ばれる男性は、現在ネコ娘が働いている店のバイト仲間だった。
「そうなんだ。あれ?そちらは弟さん?」
山田は鬼太郎を見て言った。
「えっ、あ、あの・・・。」
そうネコ娘が言いよどんでいると、
「いつも姉がお世話になってます。」
と、鬼太郎がお辞儀をした。
「!!」
それを見たネコ娘はびっくりして固まってしまう。
「礼儀正しい弟さんだね!猫さんの教育がいいのかな?」
「あ、いえ・・・。」
「じゃあ僕はこの辺で!また明日!」
そう言って山田は去って行った。
「バイト先の人かい?」
鬼太郎が口を開いた。
「えっ!?あ、うん・・・。って、鬼太郎!なんで弟だなんて・・・。」
姉弟に見られるのは嬉しくない。
それは女の自分より男の鬼太郎のほうが面白くないはず。
「なんて言えばよかったんだい?」
鬼太郎にしてみれば否定したところで友達だとしか言えない。
それはそれで、ネコ娘にとっては面白くないだろうと思ったのだ。
「そっ、それは・・・。」
『恋人です。』
なんて言ってくれるわけがないことはわかっている。
ネコ娘は言葉に詰まってしまった。
「まぁ、仕方ないさ。僕のほうが背も低いしね。」
特に気にするでもなく、鬼太郎は言う。
元々成長の速度が人間に比べてかなり遅いのが妖怪だが、
とりわけ鬼太郎は食に執着がないため、普段からロクな食事を摂っていない。
ネコ娘にしてみれば、背が低かろうが高かろうが関係ないのだが、
姉弟に見られるのはやはり寂しいものがある。
ネコ娘は少し考えてから、
「よし!これからは、あたしが鬼太郎に栄養のあるものをたくさん作るからね!」
と、高らかに宣言した。
するとそれを聞いた鬼太郎が少しだけ頬を染め呟いた。
「ネコ娘、それって・・・。」
「?」
ネコ娘はしばし考えると、顔を真っ赤にした。
(今のって・・・、まるでプロポーズみたいじゃない!!)
「ちっ、ちがっ・・・!あたし・・・そういう意味じゃ・・・!!」
恥ずかしくて慌てて否定する。
すると、
「・・・なんだ、違うのか・・・。」
と、小さな声で呟いて、鬼太郎は歩き出した。
「へっ・・・?あ、あの、鬼太郎?今なんて・・・?」
「別に。ほら、置いてくよ?」
「ちょっ、ちょっと待ってよ、鬼太郎~!」
今はまだ頼りないかもしれないけど、いつか君のすべてを守れる男になるから。
その時は僕から言わせて欲しい。
君へのプロポーズを・・・。
終